犬の去勢とは?
犬の去勢とは、オス犬の精巣(睾丸)を外科的に摘出する手術のことです。具体的には、陰嚢(いんのう)の一部を切開し、中の精巣だけを取り除きます。
一方、メス犬に対しては「避妊手術」が行われ、子宮や卵巣を摘出して繁殖を防ぎます。
犬に去勢手術は必要?
去勢手術が必要かどうかは、飼い主さんの判断に委ねられています。
「愛犬が手術されるのは可哀想…」という気持ちから、去勢手術をためらう飼い主さんもいると思います。
しかし、去勢手術によるメリット・デメリットをきちんと理解したうえで、責任をもって判断することが大切です。
犬の去勢のメリット
犬の去勢のメリットとして、主に以下の4つが挙げられます。
- 望まない妊娠を防げる
- 病気のリスクを軽減できる
- 問題行動を起こしにくくなる
- 飼い主さんが飼いやすくなる
それぞれ具体的に説明していきます。
望まない妊娠を防げる
去勢手術をすることで、望まない妊娠を防ぐことができます。
もし去勢手術をしていない状態で、脱走したり、ドッグランなどでほかの犬と交流したりすると、誤ってメス犬と交尾してしまうリスクがあります。
このようなリスクは、犬の去勢手術を行うことで防ぐことが可能です。
病気のリスクを軽減できる
去勢手術をすることで、オス犬特有の病気を予防できることも大きなメリットです。たとえば、以下が挙げられます。
- 精巣腫瘍
- 前立腺肥大
- 肛門周囲腺腫
- 会陰ヘルニア
生殖器関連の疾患の中には、重症化すると命に関わる病気もあります。つまり、犬の健康面にも影響を与える重要な手術といえるでしょう。
問題行動を起こしにくくなる
問題行動を起こしにくくなることも、去勢手術のメリットです。
たとえば、家の中や散歩中にあちこちでおしっこをかけてしまうマーキング行動が減る傾向にあります。
また、交尾をしたいという欲求から行うマウンティング行為も、少なくなるといわれています。
飼い主さんが飼いやすくなる
飼い主さんが飼いやすくなることもメリットの一つです。犬の去勢手術は、犬の健康面や行動面にさまざまな影響を与えます。
もしドッグランなどで、はじめて会ったメス犬を妊娠させてしまったら大変です。そういった心理的な負担も含めて、安心して生活できるようになります。
結果として、犬との暮らしをより気兼ねなく楽しむことにつながるでしょう。
犬の去勢のデメリット
一方で、犬の去勢手術にはデメリットもあります。
子孫を残せなくなる
去勢手術によって生殖機能を取り除くため、子孫を残すことができなくなります。
もし愛犬の子孫を残したいと考えている場合は、去勢手術はせず、計画的に繁殖を考える必要があるでしょう。
全身麻酔によるリスクがある
去勢手術は全身麻酔をして行います。麻酔によって、アナフィラキシーショックという重篤な副反応を起こす可能性もゼロではなく、一定のリスクが伴います。
もちろん、動物病院では手術前に全身の検査を行い、細心の注意を払って手術を進めてくれますが、リスクがあることは認識しておきましょう。
手術後に太りやすくなる
去勢手術後は、男性ホルモンの分泌が抑えられて、基礎代謝が低下する傾向があります。その結果、食事量が変わらなくても太ってしまうのです。
手術後はドッグフードの量や適度な運動を意識して、愛犬の肥満を防止しましょう。
問題行動が減らない可能性がある
マーキングなどの問題行動は、去勢によって落ち着くことがあります。しかし、去勢手術に適したタイミングを逃してしまうと、手術をしても収まらない可能性があります。
また、問題行動は、飼育環境や飼い主さんとのコミュニケーション不足が原因の場合もあります。さまざまな理由から、行動面での変化が見られない可能性があることも、理解しておきましょう。
<犬の去勢手術をするタイミング
犬の去勢手術をする適切なタイミングには、個体差があります。
一般的には、生殖機能が備わる性成熟を迎える前が推奨されており、小型犬の場合は6〜8ヵ月齢前後、大型犬の場合は1歳前後が目安です。
ただし、健康状態や成長スピード、さらには動物病院の方針によっても異なるため、かかりつけの動物病院によく相談してから時期を判断することが大切です。
犬の去勢手術の費用はいくら?
犬の去勢手術の費用は、住んでいる地域や動物病院によって異なりますが、目安は以下のとおりです。
小型犬:約20,000円〜
中型犬:約25,000円〜
大型犬:約30,000円〜
診察料や施術前の検査代などが別途かかる可能性もあるため、よく確認することが大切です。
ちなみに、去勢手術はペット保険の補償対象外となっていますが、お住まいの地域によっては補助金制度を設けているところもあります。
まとめ
今回は、犬の去勢について解説しました。
犬の去勢手術には、望まない妊娠を防いだり、病気のリスクを軽減したりと、多くのメリットがあります。一方で、全身麻酔のリスクなどには十分な注意が必要です。
去勢手術を行うかどうかは、メリットとデメリットを正しく理解し、動物病院とよく相談したうえで慎重に判断しましょう。